EOS kiss

発売年:1993年 標準価格:5万9千円(ボディのみ)

 

 1993年にキヤノンから発売された、当時としては画期的な小型・軽量化を達成したAF一眼レフ。それまで、一眼レフカメラの名称には「F−801S」「EOS1000」「α7700i」などといった具合に、味気ない数字やアルファベットが並び連ねられるのが通例であったが、このカメラは、業界内でも初めてのソフトな響きのネーミング「kiss」を用いた点がエポックメーキングであった。現在のkissデジタルシリーズに至るまで、脈々と受け継がれてきたネーミングというわけだ。また、ターゲットを必ずしもコンシューマー層に限定せず、ミドルクラスユーザーの使用にも配慮して、各種の露出モード等豊富な機能を装備していた点も、高く評価されている。一眼離れしたコンパクトなボディに、外見からは想像できないほどの高機能を凝縮し、「kiss」という革命的ともいえる命名を行って世に送り出す―――この斬新なパッケージングが功を奏し、kissは一部で名機とまで呼ばれるほどの大成功を収めることになったのだ。現在も大ヒット中のkissデジタルシリーズのご先祖様ともいえる、一種の金字塔的なカメラである。

 

 

★革命的ネーミング「kiss」

 このカメラの意義は、何と言っても、一眼レフ業界の中で初めて「kiss」というソフトな響きのネーミングを冠されて世に送り出された点だろう。メーカーサイド側では、恐らくコンシューマー層からのウケを狙っていたのだろうが、カメラ好きの人間からしても十分に印象に残りやすい、ツボを突いた良いネーミングである。もし仮に、このカメラの名前が、先代からの流れをそのまま引き継いで「1000N」とかになっていたりすれば、恐らくこれほどの大成功はしていなかっただろう。それほど、kissという名前は、このカメラを語る上において重要なファクターなのだ。

 ちなみに、このkissに刺激されてか、ミノルタやニコンは後に「α−Sweet」「U」といった、明らかにkissに倣ったと思われるネーミングのカメラを続々と発売する。これらのカメラは確かに悪くない出来栄えであったが、しかしkissほどの商業的成功を収めるには至らなかった。やはりこのkissには、ビギナー向け一眼レフのトップランナーとして、初心者からミドルクラスユーザーまで、さまざまな購買層をひきつける天性の魅力があったということだろう。

 

 

★色濃く残る初期EOSのテイスト

 この初代kissを手にして最初に目を引くのは、明らかに初期EOSのテイストが色濃く残された、軍艦部の各種操作系配置である。2代目New EOS kissからは操作系がぐっと近代的になり、時代の変遷を感じさせてくれるが、それと対照的に、この初代kissの操作系配置は明らかに初期EOSのそれだ。じっと眺めていると、自然にEOS 100やEOS 1000の姿が目に浮かんでくるような操作系配置である。その反面、ボディ背面の露出補正ボタンやFEロックボタン、クオーツデート機構の配置などは、後に出てくる機種kiss3Lまで継続的に採用されたものと全く同じであり、こちらは逆に、持っていて「ああ、やっぱりこれはkissなんだなあ」と実感させてくれる部分である。そういう意味で、この初代kissの操作系配置はEOSシリーズの中でも少しばかり特異なものであり、このカメラが一種の過渡期の中にあったことを感じさせてくれるのである。

 

 

★最強最悪の「プリワインド機構」

 この点は、Yoshinoriがkissシリーズを語る上で必ず一度は持ち出すファクターである。「New EOS kiss」の項でも、今回と同様に触れている(とはいっても、あの記事も書いてからもう3年くらいが経過しているが・・・)。何と言っても、ポジフィルムのスリーブを見たときに、コマ番号と実際の撮影順が逆転しているというのは、違和感があるというか、どうにも馴染めない。1、2、3と数字が並んでいれば、その順番通りに見たくなってしまうのが人間の生理的感覚というもので、わざわざこれに反するかのような仕様になっているのは、一種犯罪的なことのように思う。まあ、元々が「コンシューマー系のユーザーが、ISO400のネガを装填して記念写真や家族のスナップを撮る」的な使い方を想定して設計されているものなので、致し方のないことなのかもしれないのだが・・・。でも、いくらカメラに慣れていない人であっても、フィルムを巻き戻さないまま裏ブタを開けてしまうなんてことがそう度々あるのかな?何もわざわざプリワインド機構なんて付けなくてもいいような気がするのだが。

 このプリワインド機構は、文句なしに最強最悪である。

 

(2007.3.4)

 

 

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