デジカメ散歩の意義

今から遡ること3〜4年くらい前までは、Yoshinoriは「デジカメは良くないものであり、相対的視点からフィルムカメラと比較した場合、フィルムカメラに勝つことはできない存在である」という考え方を、根強く持っていた。黎明期の30万画素クラスのデジカメが作り出す、写真としては使い物にならぬあの絵柄の印象が強固にこびりついていたというのもあるし、また、どんなに優れたものでも4〜5年で時代遅れになり見放されてしまうIT業界の論理に、写真やカメラが組み込まれてしまうことへの反発もあったのかもしれない。何より、フィルムやレンズの種類を事細かに使い分けるなどの、フィルムカメラに特有の「趣味性」がデジタルカメラで得られそうもなかったことには、それこそ強い憤りすら覚えていた。とにかく当時は、頑固なまでにデジカメ否定の信念でゴリゴリに凝り固まっており、まさかデジタルシステムに自らの作品づくりの一端を担わせることになるなど、全くもって考えもしなかったものである。せいぜいこのHPに掲載するための資料画像を撮影するのが関の山といった感じで、デジカメで趣味の写真撮影を行うなど、もはや概念自体が頭の中になかったというわけなのだ。
そういった状態のYoshinoriであったのだが、大体2005年の暮れ〜2006年辺りを境目にして、少しずつ違った考え方が芽生え始めたのである。
まずは、デジカメは「フィルムカメラとは全くの別物」であるという捉え方をするところから、それまでとは違った、デジカメに対する見方や考え方ができるようになってきた。「フィルムカメラに取って代わる道具」としてデジカメを捉えるから、デジカメの欠点、デメリットばかりが目について嫌いになってしまうのであって、全く違う道具として捉えてやれば、フィルムカメラにはない新たな楽しみ方ができるかもしれない、という考え方に行き着いたのだ。そして結果的に「両者の長所および短所をよく知り、うまく使い分けることが大切だ」という、まことに無難でありきたりなものではあるけれども、しかし的を得た(と個人的には思っている^ ^)結論を導き出すに至ったのである。
さて、個人的体験談が妙に長くなってしまったが、以上が、今回タイトルに掲げたような「デジカメ散歩」という考え方を、Yoshinoriが受け入れるようになるまでの経緯であった。2007年は何かと撮影のタイミングを逃すことが多い年で、春の桜撮影や秋の紅葉撮影などがことごとく不発に終わってしまったため、その分を補う意味でも、非常に数多くのデジカメ散歩を行った年となった。おそらく、2008年も数多くのデジカメ散歩を行うことになるのではなかろうかと、今から予測しているところである。
その「デジカメ散歩」の意義について簡潔に整理しておこうというのが、今回のコンテンツの目的だ。

上述したようなデジカメに対する新しい考え方を、Yoshinoriが「デジカメ散歩」というスタイルにて受け入れるに至ったのは、「大人のためのデジカメ散歩術」(著者:小幡 浩二 氏、2004年、ナツメ社)を読んだことによる影響が大きかったのかなと思う。この本を通じて披露された小幡氏のダイナミックな考え方は、それまでデジカメに対して私が持っていたネガティブなイメージを払拭するのに、十分すぎるほどのインパクトがあった。フィルムカメラとデジタルカメラの使い分けについては、今日に至るまでさまざまな議論が繰り広げられているが、この本を一つのガイドラインとして、Yoshinoriは自分なりの両者の使い分け方を確立していったのである。
こうして、フィルム一眼とデジタルカメラを併用してみるなど試行錯誤を重ねた末、自分なりのデジタルカメラの一つの使用スタイルとして確立したのは、やはり「デジカメ散歩」だったというわけだ。
これまで、デジタルカメラの使用を拒んでいた時代に比べ、突然世界が広がったような気分だった。ことにコンパクトタイプのデジカメなど、液晶モニターのおかげでパララックスに悩まされずに済むし、同じ普及機クラスのカメラで比較した場合、銀塩コンパクトに比べ圧倒的に実用性が上であることを実感したのだ。一眼の場合はまた違った視点での議論の余地も十分あるとは思うが、少なくとも散歩のお供にするようなコンパクトタイプのカメラの場合、銀塩よりもデジタルの方に、圧倒的に大きな優位性があると確信したのである。
そんなわけであるので、個人的に考えているデジカメをもって散歩をすることの意義について、ポイント別に整理してみることとする。
ここからが、今回のコンテンツの本題だ。
1.写真に対して、必要以上に肩の力を入れる必要がない。
ここが一番のポイントだろう。これがもし、一眼と各種交換レンズ、場合によっては中判カメラなど持って行くという大掛かりな撮影パターンの場合だとどうか。それこそ完全に撮影そのものが主体になってしまい、散歩の体をなさなくなってしまう場合が少なくないであろう。写真を撮ることに集中するあまり、散歩というプロセスそのものがおろそかにされたのでは、本末転倒である。
デジカメを持っていけば、写真に対して「必要以上に」気を使う必要がなくなるため、散歩することそのものを、まず楽しむことができるのだ。アマチュアとして、このようなスタンスは重要なものと思う。しかも、それでいて写真を撮ることをおろそかにするというのではなく、これぞと思う瞬間が訪れたら素早くシャッターを切っていけば良いのだ。デジカメのメリットを最大限に生かし、ほんの少しでも心を動かされるものがあればどんどんシャッターを切っていく。電池の長持ちする機種を選び、メモリーは大き目のものをセットしておく。カメラは常時、JPEGの最高画質、最大解像度に設定しておく。ほんの数時間の散歩の中で百枚単位の写真を撮って帰るなど、銀塩しかなかった頃にはそうそう実現し得なかった楽しみ方であると思う。
写真を撮ることに無自覚になったりおろそかにするわけでは、断じてない。しかし必要以上に肩の力を入れることもなく、適度なさじ加減をもってして愉しむことができる。この点がデジカメ散歩の第一のメリットであると言い切って、何ら差し支えないのではなかろうか。
2.日常の中で見過ごしてきたものを、思いがけず発見できる機会が増える。
この点も重要なポイントである。カメラボディと交換レンズ、そして三脚その他撮影用具といった具合に、撮影のための装備をフルに準備して撮影に赴こうとする場合、どうしても、あらかじめ撮影したい対象を特定のものに限定してしまい、それ以外のものは気付かぬ間に見過ごしてしまうというパターンに陥りがちである。例えば、秋の紅葉を前述したようなスタイルで撮影しようとする場合がそうだ。こういった場合、紅葉の鮮やかな様子は思う存分カメラに収めるであろうが、その他の、例えば移動中にふと出会った何気ない光景など、写真に収めることなく見過ごしているということが非常に多い。「紅葉を撮る」ということにもっぱら意識を集中するために、紅葉以外のものは、自分でも気付かぬうちにやり過ごしてしまうことになるのだ。また、三脚を立てて撮影をしている間も、やたらと絵になる構図をあら探ししては、ひたすらシャッターを切って写真に収めていくといったパターンになることがとても多い。そのためになかなか素直な視点で被写体を眺められなかったり、しまいには撮り疲れしてしまうといったパターンに陥りがちなのである。
これがデジカメ散歩の場合だとどうだろうか。デジカメ散歩という場においては、最初から「これを撮るのだ!!」と必要以上に意気込み、撮影対象を特定のものに絞り込んでしまう必要がない。自分の周囲を取り囲む、あらゆるものを被写体として捉えることができる意識状態になっている。そのために、今までは気にも留めることなく見過ごしていたものを、思いがけず写真の中に収めることが可能になってくるものだ。あらゆる先入観というか、「写真を撮るのだ!!」という妙な肩の力を排除してデジカメ散歩に臨んでみれば、今まで見過ごしてきたものが次々と目に飛び込んできて驚くことになるだろう。
「灯台もと暗し」ということわざがあるが、必要以上に力を入れているために逆に見過ごすことになっている物事も、世の中には存在するものだ。自分にとっての新たな被写体を発見するために、デジカメ散歩という写真の愉しみ方は、これ以上ないくらいに有用なスタイルであると考えている。
3.散歩することになる地域の魅力を、再発見できる。
これは2.にもつながってくるポイントであるのだが、散歩写真という取り組みにおいては、それを通じて、その地域の新しい魅力を思いがけず発見できる場合が多いものだ。なぜなら、散歩写真の場合はそこに記録されることになる映像のみならず、写真を撮るにあたっての行き先、訪問先というものも重要なファクターとして含まれてくるからである。自分の生まれ育った街、あるいは現在居住している街であっても、一度カメラを片手に散歩してみれば、また新しい発見があるに違いない。
どこを散歩するにしても、まずはその街を好きになるところから始まる。そのときにその街に対する魅力を存分に感じていられたなら、それを大切にしようとしていく心も、忘れずにいられるはずである。

さて、以上3つのポイントが、Yoshinoriがデジカメ散歩の意義として捉えているものである。やや漠然としたテーマであるために、完全に定義するのは難しい話題でもあるのだが、自分なりにうまく整理してみたつもりだ。写真撮影には必ず、重量級のカメラと複数本のレンズと三脚を持って出かけている、といった方がおられれば、ぜひ一度は「デジカメ散歩」を実行してみていただきたい。この項を通じて私の言わんとしたことを、少しは感じていただけるものと思う。
コンテスト入賞を追い求めたり他人の評価を勝ち取ろうと変に意気込んだりすることなく、「自分のための」作品づくりにゆったりと取り組んでみたい。そして、デジカメの持つインターネットとの高い親和性を、存分に発揮させてみたい。こういった思いを、潜在的に抱いている方は少なくないのではないだろうか。こういう時にこそ、「デジカメ散歩」を実行してみることによって、これまで気に留めることなく見過ごしてきた、新たな可能性が発見できるかもしれないのである。
・・・さて、そのようなわけで。
この度ついに当HPにも、デジカメ散歩写真のギャラリーを新設してみることにしました。
ズバリ
です。
ギャラリーには、2004年頃の作品から順番にUPしていき、順を追って最近のものへと到達するように充実させていく予定にしています。まだ私が「デジカメ散歩」という概念をもっていなかった時代のものから少しずつ公開していくことになるかと思いますが、どうか気長にお付き合いいただけたらと思います。
これからもよろしくお願いします!!(^O^)/